ハチのお母さん
うとうとしていたら枕元で、電動ドリルで固いものに穴を開けるような音。
枕元の窓の向こうは隣のベランダ。
こんな朝早くから工事やってるのかな、でもとなり空き家だっけ、越してきたのかな、なんて思っていたら、どうも窓の向こうじゃなく、部屋の中から音がする。
よく見ると窓につけたスクリーンにでかいハチのシルエット。
ぎゃー。スズメバチが何故か部屋の中にいた。
昆虫博士と呼ばれた少年時代を経て大人になり、今でも昆虫は嫌いではないが、ハチは苦手である。
子供の頃、外に干してあった靴を履いたら、中にアシナガバチが居て、足を刺されたことがある。
大泣きして、親が病院に連れて行ってくれ、何もなかったのだが。
(アシナガバチの毒はさほど強くないが、アナフィラキシーショックの可能性はある)
それがちょっとしたトラウマになり、ぶんぶんいう羽音に恐怖を覚える。
しかも今回は枕元にスズメバチ。
体長4センチくらいのでかいやつだ。
反撃でもされたらという不安はあったが、もうどうしようもないので、殺虫剤で撃退する。
生命力が強く、しばらく羽音が止まず、やっと止んだと思ったら痙攣しつつも毒針を出し入れしていて怖かった。
おそらく洗濯物にくっついて部屋に入ったんだろう。
巣を出た女王蜂が冬眠場所を探していたのかもしれない。
かわいそうだが、運が悪かった、ということで。
苦手だけど、スズメバチの生態について知っているのは子供の頃に母が買ってくれた「ハチのお母さん」という本を愛読していたからだ。
生態について詳しくても苦手は苦手なのだ。刺すから。